ABOUT

©Yuichi Nakatsu
矢萩 智|Satoru Yahagi
SYA主宰
  • 1989年北海道生まれ。2015年東京理科大学理工学研究科建築学専攻を修了。2018年〜2020年隈研吾建築都市設計事務所勤務。2020年より矢萩智建築設計事務所を設立。2023年日本空間デザイン賞「サステナブル空間賞2023」受賞。
4つのマニフェスト
独立して4年が経ち、建築を設計する上で、自分が大切にしていることの骨格が見えてきました。ここに、それを「マニフェスト」として記します。私が建築をどのように考えているのか、少しでも知っていただけると嬉しいです。
1.ノマドのように働く
フランスの思想家ジャック・アタリが著した『21世紀の歴史』の中で、21世紀において豊かに働く人々を「ハイパーノマド」という言葉で表現しています。これは、実績や技術を活かし、場所に縛られずに働き、やがて国をつくるようなこれからの富裕層を指します。私自身も、この「ノマド」のように働くことで、場所に制約されることなく、旅をするように働くことを目指しています。制度や道徳を超え、その土地の風土や土着性を取り入れた建築を考えていきたいと思っています。国境を越え、その土地の人々と関わりながら、建築の未来を考え、設計していきます。
2.自然を愛する
建築物のすべては、自然から成り立っていると考えています。木材、鉄、コンクリートなど、すべては地球由来の自然物から生まれています。たとえば鉄は、鉄鉱石から高炉を経て精錬され、建築物の素材となります。この鉄は、原子としては地球上のあらゆる物質の最終形態ともいえます。このような自然の連環のもと、創意工夫を重ねて建築がつくられていくと考えています。したがって、建築を設計する際に自然をなおざりにすることはできません。植物の美しさ、安らぎを与える空間、小川のせせらぎなど、すべて自然から生まれたものを大切にし、それを建築として表現していきます。
3.言葉を大切に
言葉は、一音一音が組み合わさり、相手に届くものです。その相手がどのように受け取るかを考えながら、発する一音一音を大切にし、人と関わっていきたいと考えています。一方で、自分の考えや気持ちを相手にどう伝えるかも重要です。素直で丁寧に伝えることが、言葉を大切にする上で欠かせない要素だと思います。例え話を多用することも有効ですが、語彙を相手に合わせて話すことが大きな目標です。平易な表現から難解な単語まで、状況に応じた表現ができるよう、日々心がけて言葉を大切にしていきたいと思います。
4.建築はもっと自由に
規格化された建物群を見ると、「どうしてもっと面白いものをつくれないのか」と感じることがあります。建築家はもっと多様でアイコニックな建築を考えられるはずなのに、凡庸な建物が量産されている現状にはがっかりしてしまいます。ドミノ・システムは現代建築において重要な要素ではありますが、このシステムを脱却して建築をつくることはできないのかと考え、独立当初の作品で試みました。構造体からフォルムまで、建築をもっと自由に考えていくこと。これは私が生まれ育ったまちの山並みや海の荒波の風景へと繋がっていくものです。今後、ぜひ挑戦していきたいと考えています。